療育や訓練の考え方と方法

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療育や訓練に対する考え方

ダウン症に限らず,障害をもつ子の親のなかには,「障害児は,普通に育ててはダメで,専門家による特殊な療育や訓練が絶対に必要で,それをちゃんと頑張れば,障害がなくなったり軽くなったりして,健常児に近づく」と考える方が,少なからずおられるようです.
私は正反対の考え方を持っています.要約すると以下の通りです.

・療育や訓練は,日常生活のなかで親が行うものであって,専門機関での週1回程度の訓練で発達は期待できない.
・親は,専門機関で正しいやり方を憶えてきて,それを日常生活で実行すればいい.
・療育や訓練は特殊なものではなく,「普通の子育て」を細心の注意と丁寧さで行うだけ.
・具体的な方法は,これといって決定的なものがあるわけではなく,みんな試行錯誤しながら,その子に合った方法を見つけていく.
・親が無理してまでやる必要はない.可能な範囲でやればいい.
・療育や訓練の目的は,「普通の子育て」の目的と同じで,その子の可能性を伸ばし,ひいては自己実現や社会参加を目指すものであって,健常児に近づけることではない.

具体的な方法

では,細心の注意と丁寧さで行う「普通の子育て」とは何か? この答えは簡単ではなく,障害児の親に限らず全ての親が,試行錯誤しながら,その子に合った方法を見つけていくわけですが,私の場合は,脳の発達をできる限り支援するという考え方です.そのために,様々な『心地よい刺激』と『愛情』をたっぷり与えることを重視します.様々な刺激とは,触覚,聴覚,視覚,味覚,嗅覚の五感に加え,平衡感覚(重力,加速度,回転),温度感覚,筋肉や関節の自己受容感覚(曲がっているか,力を入れているか),などなどです.

乳児期に気を付けたことを列記してみます.

・とにかく,いっぱい抱っこし,いっぱい関わる.(愛情表現)
・肌を直接触れ合わせて,体温を感じさせる.(温度感覚,触覚,愛情表現)
・歌を歌ってあげたり,言葉かけをしたり,笑顔を見せる.(聴覚,視覚)
・おっぱいをあげるときは,「おっぱいよー」と声をかける.
(母の声を聴き,顔を見て,匂いを嗅ぎ,おっぱいを触り,母乳を味わう,五感総動員)
・オムツを変えるときや風呂の前後には裸になるから,刺激を与えるチャンス.
・それ以外でも赤ちゃんの機嫌がよくて,親に余裕がある時にはできるだけ関わる.
・体の周辺から心臓の方向に向けてマッサージする.(触覚)
・手,足,腰の曲げ伸ばしをする.(自己受容感覚)
・やさしく「高い高い」をする.ただし,強くしすぎると脳にダメージ.(平衡感覚,視覚)
・「いないいないばあ」をする.(聴覚,視覚)
・種々の材質(木,金属,布,昆布,するめ,鰹節ほか)の清潔で安全な小物を,触らせたり,しゃぶらせたりする.(触覚,視覚,味覚,嗅覚,温度感覚)
・赤ちゃんの声や動きに,親が反応する,返事を返す.(コミュニケーション)
・気候のいい時は,散歩に出かけると刺激が多くてよい.
・ときどき,やさしい音楽を聴かせる.(聴覚)
・テレビ,ビデオに子守をさせない.つけっぱなしにしない.(メディア害)
・夜は,明るく青白い照明は避け,暗めの電球色の照明にする.(睡眠リズム,メラトニン)

旧サイトの2004/04/14の記事を加筆して転載

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